どっちが大変?骨盤のズレと肩のズレ
最近、よく聞く骨盤のズレや骨盤矯正ですが、医療業界ではそのような言葉を聞くことも、治療対象になるということもほとんどありません。
そこで今回は、骨盤のズレはそれほどまでに気にする必要があるものなのか?それ以上に気にするべき肩のズレについてお伝えしたいと思います。
骨盤矯正って良く聞くし、もし姿勢が良くなるならやってみたいな~。
整体師さんがよく使う言葉だよね。骨盤矯正?で姿勢は良くなるのかな?
骨盤矯正したことないのに、そんなこと言わない方がいいんじゃない?
そうなんだけどね。骨盤ってそもそもほとんど動かないところだから、よっぽどよく動く肩のズレの方が大変なんだよ。
- 骨盤はほとんどズレることはなく、治療対象にもなりにくい
- 筋肉で骨盤を抑えているわけではない
- 肩のズレは大変だけど自分では治せない
少ない骨盤のズレと多い肩のズレ
一般的に骨盤のズレとは仙腸関節(おしりの関節)を作っている仙骨と腸骨との間のズレを指していると思われますが、そもそもこの仙腸関節は骨の形状と靭帯による補強により3mm程度しか動かない関節です。
2016年に日本整形外科学会と日本腰痛学会により発刊された腰痛診療ガイドラインでは、仙腸関節由来の腰痛は全腰痛の中でも6%程度とされており、この報告からもあまり多い疾患ではないことが分かります。
つまり、たとえ骨盤がズレていたとしても、日常生活に支障が出るほどの問題が起こることはあまり多くないのです。
骨盤のズレと言っても元々ほとんど動くところではないし、治療対象になることもあまり多くないのね。
それに対して、肩のズレはとても多いです。毎日何十人もの患者さんが来院されています。
五十肩(腱板断裂、肩関節周囲炎など)や肩こりのほとんどの方は肩の関節がズレてしまっています。
肩のズレとは肩甲骨と上腕骨との間のズレを指しています。
特に、上から腕を振り下ろす野球やテニス、バレーボールなどのスポーツをやっていた方の利き腕側の肩はズレている可能性が高いです。
ちなみに、2019年に厚生労働省が報告した国民生活基礎調査の概況の中で肩こりは有訴者率が男性2位、女性1位となるほどに多い症状です。
そのほとんどの方の肩はズレてしまっている可能性があります。
私も肩こりあるんだけど、私の肩もズレてるってこと??
常に肩がこっている人やマッサージを受けても、すぐにまた肩がこってしまう人は、肩がズレてることが多いんだ。
骨盤のズレと矯正の矛盾
ご存知でしょうか?骨盤矯正は国家資格を持っていないセラピストによる民間療法であり、医療ではありません。
骨盤のズレを治すという考え方は、ほとんど動かない仙腸関節が何らかの原因で数mm動いてしまったので、それを元の位置に戻す、という考え方だと思います。
確かにそのようなこともあるのでしょうが、仙腸関節をズレないように補強しているのは強靭な靭帯です。
なので、”骨盤がズレる”ということは”靭帯が緩んでいる”ということになると思うのですが、①緩んでしまった靭帯を施術で硬くすることは可能なのでしょうか?
そして、体重をかけて歩くことは手で関節を動かすよりも仙腸関節に何倍もの負担がかかるので、②たとえ施術でズレが治ったとしても、歩いてまたズレてしまうことはないのでしょうか?
ちがうちがう!
筋肉を鍛えて骨盤を安定させるんだよ!
というセラピストもいらっしゃると思います。
そのようなセラピストは骨盤を固定する筋肉である腹横筋や骨盤底筋群を鍛えるのだと思います。
しかし、これらの筋肉はカラダの中でも深層に位置する筋肉なので実際には鍛えることはとても難しく、たとえ鍛えられたとしても、③骨盤を固定するために筋力を発揮し続けることなんてできるのでしょうか?
おなかに力を入れっぱなしにするってこと?それはムリ!
そもそも骨盤のズレから問題が起きることはあまりなく、①~③を考えると骨盤のズレを治すという考え方自体が少しズレており、この考え方で仙腸関節の問題を根本から解決することは難しいと考えます。
もし、腰や足に仙腸関節由来の症状を疑われたときにはコルセットなどで骨盤を固定してみてください。仙腸関節が動かなくなれば仙腸関節由来の症状は消えるはずです。
骨盤のズレによる症状を疑った場合には、コルセットをつけることで確認できます!
肩のズレは生活に支障あり
骨盤のズレに対して肩がズレることで生活に支障が出てしまうことはとても多くあります。
なぜなら、肩甲骨と上腕骨の接触部分のズレは通常2mm未満ですが、肩の関節は三次元的に最も大きく動かせる関節であり、疲労などにより筋肉に張りが出てしまうと関節がズレてしまうからです。
みなさんの中にも自分の”肩が前に出ている”と感じたことのある方はいらっしゃいませんか?
“腕を挙げた作業が長く続けられない”方や日中は気にならないけれども”寝ていると肩が痛む”という方も肩がズレている可能性が高いです。
骨盤と違って、肩はズレるとすぐに支障がでちゃうのね!
一度でも筋肉に小さな炎症が起きてしまえば、炎症が落ち着く過程で筋肉は硬くなってしまい、腱板断裂などの原因になることもありますし、放っておくとほとんど場合において肩こりに悩まされるようになってしまいます。
しかし、肩こりに対してマッサージを受けるというのも少し違います。
じつは、カタくなっている筋肉は押しても(マッサージ)、引っぱっても(ストレッチ)柔らかくならずに、筋肉の中の血流が悪くなってしてしまうことがあります。
え・・・マッサージもストレッチもダメなの?
カタなって押されると痛い筋肉はマッサージもストレッチもダメなんだ。
だからといって自分で動かして治すこともできません。なぜなら、肩がズレていると腕を動かしたときの刺激が脳に伝わり、余計に肩の周りの筋肉をカタくしてしまうのです。
肩のズレを治すためには肩甲骨と上腕骨の間の組織を柔らかくする必要があるため、片手で肩甲骨を固定して、もう片方の手で腕を動かすしかありません。
そのためには一人では手が足りません。つまり、自主トレの限界です。
肩のズレによる症状を疑った場合には、病院の受診と理学療法士のチェックを受けてみることをお勧めします。
まとめ
ここでは骨盤のズレと肩のズレについてお伝えしました。
- 骨盤のズレによって生活に支障が出ることは少ない
- 筋肉を鍛えて骨盤のズレを防ぐのは難しい
- 骨盤のズレを疑った場合にはコルセットをつけてみる
- 肩のズレによって生活に支障が出ることは多い
- 肩こりの原因に肩のズレが関係していることが多い
- 肩のズレを疑った場合には病院の受診と理学療法士のチェックを受けてみる
肩のズレは年齢に関係なく誰であっても起きることです。
肩のズレを疑った場合には早めに受診してみてください。受診が早ければ早いほど、早く治すことができると思います。
ズレが始まっちゃうと自分では治せないから、普段から自分のカラダに気を配ってないといけないのね。
少しでも痛みを感じたら、放っておかないで受診したほうがいいね。