放っておけば治るはウソ?ホント?五十肩①

40歳を過ぎた頃からでしょうか?肩が痛いと言うと、「それ、五十肩じゃない?」と周りからと言われるようになったのは。

「40歳だから四十肩でしょ!」と返したりもしますが、そもそも五十肩とはどのようなものなのでしょうか?

五十肩ってなに?1年くらい放っておけば治るの?運動すれば治るの?と、よく話に聞く五十肩ではありますが、いざ考えてみると五十肩について知らないことばかりです。

そこで今回は、五十肩とそもそも何なのか?というところから、患者さんからよく質問を受ける疑問にお答えしていきたいと思います。

40歳代でも五十肩って言うの!?

じつは、五十肩は40~65歳に多いって言われているんだ。

じゃあ、何で五十肩って言うの!?

それはね・・・。

目次

五十肩ってなに?

凡、人五十歳ばかりの時、手腕、関節痛む事あり
程過ぎれば薬せずして癒ゆるものなり、
俗にこれを五十腕とも五十肩ともいう。
また長命病という。

俚言集覧, 1797.

これは、江戸時代である1797年に発行された俚言集覧という、今でいう国語辞典からの引用です。

分かりやすくすると、

50歳頃になると、腕や肩に痛みが出ることがあるが
ある程度の時間が経てば薬を飲まなくても治るもので、
これを五十腕や五十肩という。

という感じでしょうか?

やっぱり、50歳頃に痛くなるから五十肩なんだね。

一見すると、50歳頃に肩に痛みが出るから五十肩と見えますが、最後の一文を見てください。

また長命病という。

江戸時代は人生50年と言われていたそうです。つまり、当時の平均寿命である50歳頃に痛くなる肩を五十肩と呼んでいたのです。

現在の平均寿命は下の図のように、どんどん高くなっています。

厚生労働省: 令和3年簡易生命表の概況, 2022.

もしかすると江戸時代の五十肩は、現代で言えば80歳頃に肩に痛みが出てしまう八十肩と言えるかもしれません。

なので、五十肩が多いのは40~65歳とは言われていますが、70歳、80歳になっても五十肩になってしまう可能性があると思っていた方が良いのかもしれません。

もう一文、気になる記述がありました。

程過ぎれば薬せずして癒ゆるものなり

時間が経てば治るという記述ですが、はたして本当にそうなのでしょうか?

放っておけば治るのか?

五十肩の症状は主に肩の痛み運動制限です。運動制限は痛みから起こるものと肩がカタくなってしまって起こるものがあります。

ここで、五十肩の一番の謎である「放っておけば治るのか?」の真相に迫っていきたいと思います。

もちろん、江戸時代の国語辞典にも記述があった通り、確かに時間が経てば治ります。

痛みは!

残念ながら、カタさは取れません

五十肩のなり始めには肩に炎症が起きています。その炎症は時間が経てば次の3つの期間を経て徐々に落ち着いていきます。

五十肩の治る過程

この3つの期間が終わるのに約1年かかると言われています。

1年くらい放っておけば治る”の1年はここからきています。

1年の間にいろんな痛みを感じるの?

炎症期には、何もしていなくてもズキズキとした痛みがあります。

この時期には安静が一番で運動は逆効果になりかねません。クッションなどを用いて、できる限り肩の血流を滞らせない工夫が必要となります。

炎症期から拘縮期になると、いつもあった痛みが治まり、動かした時や夜中に痛みを感じるようになります。

これは肩がカタくなり、血流が悪くなることで起こります。

この時期から回復期にかけてはリハビリを受けてカタさを取っておくことが重要です。

特に日常生活で腕を使うことのない可動範囲については、関節周りの筋肉などが伸びる機会がないので、どんどんカタくなってしまいます。

そうなってしまうと自分で行う運動だけではカタさを取り切れなくなってしまいます。

自主トレの限界です。

つまり、放っておいても治るのは痛みだけであり、カタさは残ってしまう可能性が高いのです。

運動をすれば治るのか?

五十肩は放っておいても痛みはなくなり、ある程度のカタさも取れるので、そのままにしてしまっている方が多くいます。

その一方で、肩がカタくなり過ぎてしまうことで姿勢にまで影響が出てしまい、なで肩になったり、猫背になってしまっている方もいます。

なぜ、そのような違いが起きてしまうのでしょうか?下の図を見てください。

炎症の程度の違い

じつは炎症期に炎症が強かった方ほど、拘縮期に肩がカタくなる傾向があります。

他にも血流の状態も影響していると考えられます。

そのため、肩が痛み始めた炎症期における血流を促した状態での安静がとても重要となります。

この時期に運動はしない方が良いのです。

運動をしちゃいけない時期があるのね!

炎症期をうまくやり過ごすことができると肩はカタくなりにくくなり、治るまでの時間を短くすることができるのです。

しかし、その血流を促した姿勢の取り方は肩の状態にもよるので、自分で100点を取ることが難しいのが実際のところです。

なので、肩に痛みが出てしまったときには放っておかず、肩のリハビリが受けられる施設に行くことをオススメします。

まとめ

今回は、五十肩とそもそも何なのか?というところから、患者さんからよく質問を受ける疑問にお答えしました。

・五十肩は40歳以降で起きる肩の痛みと運動制限
・放っておいて治るのは痛みで運動制限を取り切るのは難しい
・炎症期の痛みの強さでその後のカタさが決まる
・炎症期には安静が一番で運動は逆効果になることも

もし、いろんな運動をやってみても痛みやカタさが取り切れない場合には、肩のリハビリが受けられる施設に行ってみてください。

とにかく、五十肩は放っておいちゃいけないのね!

そうなんだ。検査を受けたら五十肩じゃなかったなんてこともあるからね・・・。

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